気時計

スイスイとねぶる

降雪、味覚。

真昼間に雪が降った。まさに「白昼堂々」だ。1日降ったら「白日」だ。


しかし。


ひらひら舞う雪とは言っても、いかんせんそうには見えない。真っ直ぐに傘を武力行使する、粉末アルコール、あるいは湯の花と大差ない。あの、甘ったるそうに降り込んで、そのくせ着地した途端にバァ、と消える様は儚いが特に切なくもならん。「気付かない小さなもの」も感じない。なぜなら、腕に一度くっつけば蕩けることなく固形として残るのだから。観賞用なんて、間に合ってまぁす。ざまぁ、と私は天にツバ吐く。重力で帰ってきた唾も、雪のようだ。しばらく唾飛ばして遊ぶ。立ち並ぶツバのミステリーサークルは達成感の港。童の心に戻った思いだ。

フト、味が気になり出す。唾液をこぼして、alcohol、甘ったるいと、どうも腹が減る文句で満ちている。なるほど雪は冬が食べごろ。ひとつ食べたくなる。子供の頃はひょいぱくと空中からおててを伸ばして掴み取り口に運んだものだった。その頃のことなぞ、遙か昔のように偲ばるる。それに今では精密動作性も眉を潜めている。だが、服についたやつは汚い、そもそも雪なんて工業で慣れてるし、肺も大事にしなきゃだし、やめようかなとも思う。


一粒なら。私の頭に茗荷の泡が浮かぶ。


5秒ルールもある。それに、呼吸していれば誰しも菌の一つや二つ吸うさ。

私は傘を下げてまっしろけっけな・を仰いだ。

しまった、風。

どんどん口を掠めることなく肌を刺す。もったいね。自分から捕まえに行く。そんなパン食べる鳩のような俊敏さもない。どうしよう。ただ時間が過ぎる。

悩み悩み、私は向かい風に恵まれた。万歳、雪はこっちに飛んでくる。二つ数えないうちに口の中に一粒、ごちょっと冷たいのが入った。


味はなかった。煙臭くもなかったし、爽やかでもなかった。塵の味もしなければ、森の味もしなかった。私はふと我に帰る。子供。そこにいた一人の子供は子供でいることを恥じた。